こんにちは。
個展「東雲の便り」、7日目終了しました。
正直、このご時世なので誰も来ないだろうなぁとか思っていたのですが、想像以上にご来場いただけてとても嬉しく思います。
「何人かで描いているのかと思った」といったご感想を数回いただき、苦笑い。
そもそも作品によって絵柄を変える人間だというのと、初個展ということでいろいろ持ってきた結果として作品の制作年がバラバラな点も原因かもしれません。
ちなみに、額装して展示している原画で一番古いのは2007年制作です。
原画ファイルに入っているものだと最古は2003年頃、下描きファイルに至ってはそれどころじゃない太古の遺産レベルのもあったり。
それはさておき。
今回は個展タイトルの由来といいますか、どういう意味合いでの命名だったのかという話をしようかと思います。
これについては意外とツッコミが入らなかったのですが、それはつまり不自然な日本語にはなっていないということでしょうか。
ワタクシ、気をつけていないとすぐ厨二的な命名をしてしまう人で、そこは結構気を配ったつもりだったので少し安心しました…。
(※かなり長いので一旦折りたたみます)
「東雲(しののめ)」というキーワード
まず個展タイトルを決める際、空に関わるワードを入れたいという個人的なこだわりポイントがありました。
空を描くのが好きというのもありますが、実はこれまでの活動で重要な部分につけた名称の多くに「空(そら)」または「sky」を入れていまして。要は慣例のようなものです。
それでいろいろ検討した結果、選んだのが「東雲(しののめ)」。
これは、ざっくりと言えば「明け方」とほぼ同義の言葉ですね。
真っ暗だった夜が終わり、太陽の光が射し込んできて空がぼんやりと明るくなってくる、そんな頃合いを指すようです。
これは言い換えるならば、“移り変ろうという動きは見えるけれど、まだはっきりとわかりやすく「暗い」「明るい」で表せない微妙な状態”なのかな、と。
そしてそれは、この個展タイトルに悩んでいた当時の自分、だけでなく、これまでの活動を形容するにも具合の良い言葉かもしれない、と思ったのでした。
「陰」の作品、「陽」の作品
私の作品を複数見てくださっている方ならおわかりかと思いますが、私の作品は全体の雰囲気で分けると大体二種類になります。
暗い「陰」の作品と、明るい「陽」の作品。それも、結構な落差。
思い悩む時期(人生の大半)に「陰」が出て、何か希望を感じるような、楽しい、幸せ、といったことがあると「陽」に移る。そして、そのうち元に戻る。
それはそれでいいとして、ここで問題が一つ。
個展に出す作品の選出は悩みどころですが、特に初個展となる今回は、「陰」と「陽」のどちらかに絞るというのは何か違うな、と思いました。
どちらかを省いたら、統一感は出るかもしれませんが、私自身からは遠ざかるな、と。
そうして、初個展だからこそ全部を織り交ぜたい、と思った結果、そんな微妙な状態に合うようなワードを探すことにしたのでした。
そのうち2回目3回目の個展を開催できるようなことがあれば、どちらかに絞るのもいいかもしれません。が、それはまた別の話。
個展決定後の「陰」加速
さて、そんなこんなで「東雲」は決まりました。
次は「便り」の部分ですが、これは「お知らせが届く」という文字通りの使い方をしています。
つまり「東雲の便り」は直訳すると、「(精神的に)暗かった状態から明るいところにようやく進みそう、というお知らせですよ」という意味です。
先ほどの、東雲を選んだ理由だけなら、もうそのまんま「東雲」がタイトルでも良かったのですが…。
これはあんまり具体的に言うと怒られそうなので、ざっくりとだけ。
個展開催決定後、職場環境が急激に悪化しました。主に人員的な意味で。
たくさんのトラブルに見舞われ、それらが他の原因ならまだよかったのですが、ほぼ全部が内部の人間に起因するものだったことからストレスが半端なかったのです。
正直、荒れてました。私が。特に11月〜年始あたりが酷かったと思います。
そんな状態で個展の準備など進むはずもなく…。
新年を迎え、少しだけ状況がマシになったところで、ようやくタイトルが決定しました。
上記の直訳内容は、本当にその当時の私自身の状況そのままだったというわけです。(もう戻って来れないかと思った)(転職したいお)
開催直前の「陰」追い討ち
さて、ギリギリながらタイトル決定してDMも完成(約3週間前)(激遅)。
いよいよ搬入日まで準備も佳境というこの大事な時期、まさかの展開となりました。
新型コロナウイルス上陸。
いや、これは…。
どうしてこうなった。どうしてこうなった。
単に未知の病がやってきたという件だけならまだそこまで複雑でもなかったと思いますが、情報錯綜からの人為的なミス(デマ拡散など)により二次三次と社会問題が深刻化していってる(現在進行形)のが誠に辛いのですよ。
(※私はこのRTsukiの名前で政治的な発言をするつもりは全くありません)
新型コロナウイルスの影響は、仕事にも徐々に徐々に出てきています。
が、それらは職場の全員で何とかするとして。
私個人としては何よりも、まず個展が開催できるのかという大問題を抱えていて気が気ではありませんでした。
結果としては無事開催に至りますが、世間では様々なイベントの中止や延期、内容変更による小規模開催などが相次ぐ状態。
過度の買い占めにより店から消えた生活必需品。
仕事も物資もなくなり、各所から悲鳴が聞こえる日々。
学校は休校が増え、会社は時短勤務やリモートワークなどで対応。
そして、街からは人が減っていきました。

そんな状況の中、個展の搬入日だった2/23の朝に描き上がったのがこちらの作品(手前の方)です。
また「陰」の方に戻ってしまいました。
せっかく東雲が見えていたのに。もはや個展もタイトル詐欺状態ですよ。
「東雲」を目指して
個展開催中はほぼ毎日ギャラリーに通っていますが、毎日の電車内が平時と比べて明らかにガラガラなのが虚しい。
今、国内の多くが「陰」の状態に陥っています。
仕事でやっているわけでもない、技術も不安定な一介の絵描き人にできることは少ないかもしれません。
ただ、誰も何もせずにいて夜明けが来るとも思っていません。経験上。
少しでもできることを探していきたいと思います。
自分を含め、「何とかやっているよ」「前進してるよ」と便りを送れるようになる人が早く増えるように。
こんな状況の最中、このタイトルで個展を開催できたのは何かの導きだと考えることにしました。
まぁ、ただの偶然でしょうね。実際のところは。
壮大な妄想ですよ。しかし、妄想は力なり。いつの時代でも。
そんな感じで、今日からも自分なりに描いていこうと思った次第です。
呆れるほど長い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。
余談ですが、私が東雲という言葉を知ったきっかけはKANさんの9thアルバム『東雲』(隠れた名盤です)。
東雲
そのため、東雲の空の色合いもこのアルバムのジャケットにあるような全体が紫のイメージが刷り込まれていまして(実際間違ってはいない)、メインビジュアルも最初はこんな感じの色で塗ってました。
途中で「なんか違う」ってなっていろいろ修正しまくり、結果的に没にしましたが。
その没画も会場に展示していますので、よろしければご覧くださいませ。