こんにちは。約3日ぶりの私です。皆様いかがお過ごしでしょうか。
この記事を打ち始めたら急にものすごい雨が降ってきました…ゲリラァ…。

さて、今回は前回に続いて、現在参加中の「ZEROTEN2022 -Tokyo-」に関する話です。
遠隔投票・通販のお知らせと今回の参加作品2点について解説のような思い出話のようなものをしたいと思います。
遠隔投票・通販用のページはこちら↓

https://www.t2y.info/artist01/14780.html

私はNo.58で参加しています。
今回はスキャンした画像を載せていただきましたが、原画じゃないと見えない色が結構ある(後述します)ので、よければ現地で見ていただけると嬉しいです。

こちらの遠隔投票・通販用ページからは全参加作品(180点)の画像を閲覧できます。
遠隔投票の方法が今回から変わりましたのでご注意ください。
以前は画像を生成後にメール送信するという手順でしたが、今回は専用フォームに入力して送信することで投票完了となります。
ちなみに、私が初参加だった昨年のゼロテン東京のときはもっと複雑なやり方だったので、一年でものすごく進化しました。
フォーム製作者は今回No.14で参加されているあべゆりさんです。ありがとうございます。

投票は1人4票で、それより多くても少なくても無効となりますのでご注意ください。
この投票用紙は印刷されて作家本人へ渡るようになっています。
是非感想も添えていただけますと私は嬉しく思いますし、他の参加作家さんもそう思うはず。
ご協力いただける方は、遠隔投票時の注意事項をよくご確認お願いいたします。

ここから先は、参加作品についての簡単な解説。
…簡単、か?
いや、難しい内容ではないんですが、今回も結局長いのでご注意ください…。
長い話は嫌いだぜって方はここで終わりにするか、最後のブロックまで飛ばしましょう。

今回の2作品はいかにも対になるような構図で、テーマもほぼ共通しているものの、単体でも簡潔するように制作しています。
登場人物についての裏話は前回ちょろっと書きました(内輪ネタなので読まなくても大丈夫です)、今回は珍しく男性メイン。
実は昔は男性ばかり描いてた時期もあるんですよ。最近の作品からは想像し難いかもですが。
今回を機に、これからは男性メインの作品も少しずつ増やしていけたらなぁと思ってます。


①「陽光を待つ」「雪解けを待つ」(2022年)

「陽光を待つ」は、雨の中で佇む少年と紫陽花。
「雪解けを待つ」は、雪の中で佇む少年と水仙。
(ホントは雪の方は青年なんですが…)(←めちゃくちゃ童顔な20代設定です)

②使用画材等について

使用画材は共通で、水彩色鉛筆(STAEDTLER「カラトアクェレル」)、油性色鉛筆(トンボ鉛筆「色辞典」)、パステル(ゴンドラ、ヌーベル)、顔彩(吉祥)。
支持体はクレスター水彩紙。私の荒々しい描き方にいつも耐えてくれるナイスな御方です。
顔彩は下塗りのみで、着彩のメインは水彩色鉛筆とパステル。
油性色鉛筆は人物の主線と全体の色味調整に使用していて、第一集vol.3に入っている「土龍色(もぐらいろ)」一色しか使ってません。
色辞典メインで描いてた頃に一番使ってた色です。最近のトレンドとか関係なく昔からくすんだ色が好き。
油性色鉛筆は今ではポリクロモスを使うことの方が多いのですが、少し硬くてあたたかみもあるこの色を使いたかったので、今回は色辞典にしました。

明らかにこれだけめちゃくちゃ減ってる

③作品のテーマについて

今回描こうと思ったのは、「やさしい雨」と「やさしい雪」
個人的な合言葉は「こんな天気も悪くないだろう」です。

作品に登場するのは、人物と周りにある花。そして空のみ。
ここにいる人物たちは、どちらかといえばあたたかい天気の方を望んでいます。
しかし、雨や雪の日も悪くないとも思っています。
雨や雪のおかげで、自分や周りの花たちも生きている。
晴れの日にはないことだっていろいろある。
例えば、雨に濡れたり雪に耐えながらも咲く紫陽花や水仙は、こんな天気じゃないと見られません。
だからタイトルは、陽光や雪解けが「恋しい」や「楽しみ」、「待ち遠しい」などではなく、「待つ」です。
雨や雪の後には、いつか晴れの日も来る。
そこに流れる時間や空気は誰にだって平等。無理に急ぐことはないし、みんなが同じ感性ということもない。
特定の天気を喜んだり嫌ったり、描き手の意図が強く出るような表現は極力避けています。
できる限りやさしく。ニュートラルな、見る側の感情に委ねられるような作品を目指しました。

雨と雪は、どちらも「いい天気」という扱いをされないことが多い天気ですね。
雨や雪の日に誰かと会うシーンでは、「お足元の悪い中…」などの遠慮気味な表現が使われます。
長いこと雨や雪の日が続いた後に晴れの天気予報が出ると、「ようやく晴れ間が…」などのみんな待ち侘びてるかのような表現がよく聞こえてきます。
実際、足元が良くはないのはそうでしょうし(転んだら大惨事)、晴れてないとできない用事を抱えている人は「早く晴れてくれ!」と思うでしょう。
しかし雨や雪は、あらゆる生物にとって恵みをもたらすもの。水の循環には欠かせません。
晴れの日しかない世界=です。
というか、近年は温暖化の影響で、暑い季節は晴れの日すら嫌われることも珍しくない感じですね…。
また、雨や雪が降る時間に見えるもの、聞こえてくる音、温度、感触、それらがもたらす様々なものに、特別な感情を抱く人もいます。
生死に関わるような荒天でもないなら、あくまで天気の良し悪しは、「それを語る人が考える過ごしやすさ、心地よさ」、という実にブレやすい観点での話になるよなぁ、と。
それが必要なこともありますが、窮屈に感じることもある。特に心が疲れている状態だと。
今回はなるべく全方向に対してやさしいものを作りたかった。そんな作品です。


ちなみに、そこに注目する考え方に至ったのは、自分が体験した感覚の変化が原因です。
(※ここから次のブロックまで昔話のターン)

私は子どもの頃、雪の日が好きだった記憶があります。
関東住みなので年に数回しか降らず、特別感があるので尚更そう思ったのでしょう。
しかし大学生になると、一転して雪の日は嫌いになりました。
ものすごく単純な理由です。電車が止まるから。路面が凍るから
ほとんどの学友たちが県内住みだった中で数少ない県外生で、電車+自転車+徒歩で通学に片道1時間半程度かかる生活を送っていた私にとって、この2点は実に致命的だったのです(※最悪、自分だけ遅刻する)。

そんな私も学生生活終わってから長く経ちますが、今では雪の日も悪くないと思うようになりました。
普段は通勤に公共交通機関を使っているものの、頑張れば全部歩いて辿り着けないこともない距離。
運休になっても大丈夫という安心感が、天気を受け入れる心の余裕に繋がったようです。
絵の資料目的でむしろ外に出て写真撮りまくる始末。

そして、ここまでの感覚が変わる原因になったのは、全部私生活の変化によるもの。
なんて勝手な心理なんだろう、と思うようになったわけです。
天気が、自然が私個人に対して、特別何かしたことなんてないはずなのに。
以前から「空」はよく描いていましたが、そこに登場人物の感情を乗せるという現在の作風になっていったのは、おそらくこの辺の考え方の変化によるところが大きいと思います。

ちなみに雨の日については、昔から特別好きも嫌いもない、まさしく「悪くないだろう」(例のキザな言い方で)な感覚だったのですが、コロナ禍になってからまた変化が。
普段から少ない人通りがさらに減ってほぼゼロになるのを好機として、マスク外して冷たい空気を楽しみながら電車一駅分歩いて帰るとかよくやるようになりました。何やってんの。
マスク生活の不快さが、雨の冷たさを求めるという新しい感覚を目覚めさせたようです…。

④制作でこだわった点

今回のテーマ的に、一番頑張りたいのは空の表現。
空から降る様子と冷たい空気感、強い表現を使わずに雨と雪でどう違った画面にしたものか、と。
空の部分でメインで使っているのは2種類のパステルです。
全体の空気はソフトタイプのゴンドラで作り、その後雨の方はハードタイプのヌーベル、雪の方はそのままゴンドラを使って雨と雪を描写。
そしてまた全体を馴染ませた後に粒を描き足し…を繰り返しました。
あくまで、空気感で伝わるように。はっきりとは描き過ぎないように。

ところで、パステルの白は塗り込み次第で光沢が出やすいんですよね。
そのため原画で見ると、真正面から見た場合と他の角度から見た場合とで、雨と雪の量が微妙に違って見えたりします(特に雪の方がわかりやすい)。
偶然の産物ですが、見え方が変わるというのは今回のテーマ的にも面白いことになったな、と。

ちなみにパステルの表現については、ゼロテン東京の前参加していた魔女展3で、ギャラリースタッフの方が作品紹介してくださったときのツイートが大変嬉しかった。

「砂糖菓子のような優しい作品」、初めて言われた例えです。
やさしさを意識した今回の制作で、この言葉にとても自信付けられました。ありがとうございます。

⑤余談:花と花言葉の話

今回描いている花は、雨に濡れる紫陽花と、雪の積もる水仙。
紫陽花と水仙の花言葉は全体的なものと色別・品種別とでたくさんありますが、どれもポジティブ/ネガティブ両極端なところがあります。
その辺も今回描きたいテーマに合ってるな、と。

多いので色別・品種別は省略しますが…
紫陽花の全体の花言葉は、集まって咲くことに由来する「家族」「団欒」「和気藹々」、色が変化しやすいことに由来する「移り気」「浮気」。
水仙の全体の花言葉は、ギリシア神話のエピソードに由来する「自己愛」「うぬぼれ」、開花時期に由来する「希望」「尊敬」。
最初はもともとの花の持つイメージで選びましたが、調べてみて面白いなぁと思いました。


以上、またしても長くなりましたが、今回の制作の背景的なお話でした。
解説がないとわからないようなことはわからないままでいい。作品を見てどう思ったかが全て。
…という個人の心情はそのままですが、コンペだと選ぶための作品情報が欲しくなる気持ちもわかります。私もTwitterで見かけた解説は参考にしてます。
なので今回も作品解説を入れましたが、普段やってないせいでまとめるの下手すぎますね…。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
あとで同じ内容と、何か追記したいことが出てきた場合もTwitterの方に流しますね。

今回のゼロテンも力作が勢揃い。大変見応えがあると思います。
会期中は時期的に雨の日が増えそうですが、そんな日にアートを見るのもいいものです。
是非、楽しんでいただければ幸いです。

それでは今回はこの辺で。ありがとうございました。