こんにちは。普通の投稿記事としてはお久しぶりです。
今回は、現在開催中(2023/12/9〜12/23)のGALLERY龍屋20周年記念企画展「タツコン超」に送り出している作品『碧落に紡ぐ風のうた』について、作品解説のような制作背景のような、そんな感じの話をしようと思います。
…ギリギリすぎる制作状況で完成させた直後のナチュラルハイ状態でタイトルつけたので、冷静になってから見返したらあまりにも厨二じゃねえかァと頭を抱えたのですが、冷静になった頭で考えてもやりたかったことをこれ以上言い表せる表現が思いつきません。私はナチュラル厨二でした。
※ものすごく長いです(大体6000字くらい)
【作品情報】
『碧落に紡ぐ風のうた』(2023年11月)
水彩色鉛筆、水彩グラファイト鉛筆、カラーグラファイト鉛筆、油性色鉛筆、
ウォーターフォード水彩紙、木製パネル
220×273mm(F3サイズ)
【テーマ「魂(soul)」の解釈】
今回の「タツコン超」、参加作品の共通テーマは「魂(soul)」。
魂を英語で表現する場合、soulとspiritがよく使われると思います。
あんまり違いを理解してなかったので調べたところ、いろんな人が同じ疑問を持っていたようで、各種質問サイトやネイティブの方の解説など色々出てきました。
soul→肉体の対語、肉体のあるものに生命的なものを付与するもの、その人のアイデンティティや信念などの感情的で本質的な要素、永遠不滅のもの
spirit→幽霊など肉体を伴わない場合にも使われる、その人の死後も受け継がれる信念や理想など
大体こんな感じらしいのですが、どの解説もところどころ違うので確証は得られず…。
とりあえず都合よくミックスして自分で解釈したものとして、今回のテーマ「魂(soul)」は、「(特定の人を想像した上で語る)その人らしい本質的な部分」「その人の死後も人づてに語られる限り永遠にあり続けるもの」という考え方に落ち着きました。
例えば「侍魂」などのような概念的な表現や知らない誰かの話ではなく、特定の誰かが思い浮かぶ、という感じです。
それが実際に会ったかどうか、本人の思惑と合っているかはさておき…。
【作品を構成する要素とコンセプトについて】
この作品、私が普段から大切に描いている要素が全部盛りに近い状態です。
なので先に、普段どういう意図や経緯で描いているのかを書いていきたいと思います。
どれも既にどこかで書いていることなので、「もう知っとるわ!」という方はすっ飛ばしてください。
私は空と人物を配置する作品をよく描いていますが、画面の中で空の占める割合が大きい場合、空の様子は人物の心情を表すものとして描いていることが多いです。
地上にいる限り人の生活はいつも空とともにあり、どんな人も同じ空の下にいる、というのは物事を広い見方で捉えるときに救いにも諦めにもなる…。
常にそこにあり、人の精神によくも悪くも安定をもたらす非常に大きな存在だという考え方から来ています。
これは私が学生時代が終わるまでの期間、引っ越しやら遠距離通学やら続いたことで、土地や人よりも絶対に離れることのない空が精神的な拠り所になっている部分があるからではないかと思っています。
風の描写を入れることも多いのですが、空と同様に心情と連動させているところがあります。
人物を特にメインとしているときは意識して描いていることが多いです。
風の力は「自ら動いて周りを動かす」「他の動きも器用に流して柔軟に受け入れる」という要素があると考えていて、それは人物に当てはめると“主人公属性”だな…と。(この辺は漫画やゲームの影響も強い)
ものを書くという行為や書いたものについては、「その人が生きた時間の証を残す、伝える」という意味合いで作品に取り入れていることが多いです。
人は全てのものを覚えておくことはできない。
しかし、自分の手で記しておくことで、その時の気持ちごと残しておくことができる。いつでも思い出を取り戻せるきっかけになる…。
私自身が長年日記のような雑記のようなものを書き続けてきたこと、先に書いたように土地の移動が多かったことで過去の記憶が曖昧になっている等の実体験による考え方から来ています。
また、文具は私の現状での本業で扱っているものなので、画面に入れる場合は毎回アイテム選びの段階から割と強めの意図が込められていたり。実は。
【今回の作品のこだわりなど】
ここからは、今回の作品についての具体的な話を書いていきます。
今回のテーマ「魂(soul)」について、「(特定の人を想像した上で語る)その人らしい本質的な部分」「その人の死後も人づてに語られる限り永遠にあり続けるもの」という考え方に至ったわけですが、それを表現するのに入れたのは、私がこれまで何度も描いてきた「空」や「何かを記す人」などです。
今回描いた空、色の混ざり方にかなりこだわっていたのですが、意識したのは「時間帯を断定できない空」。
見る人見る箇所によって、朝にも昼にも、夜にも見えるように。
「涯てのない長い時間」「永遠」を感じられるように。なっていればいいなぁ、と。
実際この画面内にいる人物はどこかの時間帯でこの場所にいるわけですが、それは見た方の感じ方におまかせするということで…。
タイトルにある「碧落」というのは、「大空」「青空」であり、「遙か遠い涯て」という意味もあります。
その空を斜めに大きく突っ切るのが長い飛行機雲。
最近知ったのですが、飛行機雲がすぐに消えず長く残っている状態というのは、上空が湿っている場合に発生するとのこと。なので、数日のうちに雨になることが多いそうです。
また、スピリチュアルな観点では気持ちの(前向きな)変化の前兆やら運気上昇やら、基本的にいい意味での変化というようなジンクスで扱われているとのこと。
この辺を踏まえて今回の飛行機雲は、長く繋がっていく魂の連鎖を表す要素の一つとして入れてみました。
命が尽き、大切な人の魂が遙か涯てにいってしまったように感じられて悲しくなっても、残された人の中に影響として残ったその魂は新しい一歩のきっかけにもなるかもしれない。
…というような、かなり前向きな方向の当てはめ方をしています。
人物は、私の作品に昔からよく出てくる女の子です。見覚えがあるという方もいらっしゃるかもしれません。
(作品に登場する人物が既にいる創作キャラの場合は、毎回一応その子を選んだ理由があったりするのですが、私しか知らない設定ありきなので基本的に説明しないことにしてます)
彼女が書いているのは、ただの日常なのか、何らかの創作なのか。あるいは、なんの意味もないことかもしれない。
内容はさておき、何かを記すというのは彼女の今がカタチになる瞬間ということ。
風になびかれ書き続ける様子は、私が描くものとして「今を生きている」ということのまさに象徴的な姿です。
ちなみに、タイトルに「うた」とあり、この少女も口元が何か語っているような歌っているような感じに描いているのですが、これは下描きや下塗りの段階では違う表情でした(口を閉じてました)。
今回の作品の準備期間中、音楽に関連する個人的に大きな出来事があり、その要素をどこかに入れたくなったので途中で変えたものです。
彼女が手に持って書いているのは、いわゆるミニ6のシステム手帳。手帳っぽい外見イメージとしてベルト付。
システム手帳というとスケジュール管理に使うイメージの方も多いと思いますが、このサイズだとメモリフィルだけ入れて単にメモ帳として使う方も多いです。
今回は見た目だけで使い方が限定されない方がいいかなぁと思ったのでこのサイズにしました。
システム手帳はリングにリフィルを綴じて使うものなので、外してしまえばバラバラ。
うっかりすると順番もわからなくなるかもしれないし、部分的に無くなる可能性もある。
…というデメリットが、考えるためのメモやノートとしては逆にメリットになることもあります。
順番は変えた方がいいこともある、部分的に無くしてもいい。こういう意図してページを厳選するという使い方もあり、実際そういうコンセプトの商品もあったり(PLOTTERとか)。
このページの取捨選択、残すページに意図があるというあたり、「その人の魂のどの部分が伝わっていくかは受け取り側次第」「人の魂それぞれ全ての要素が後々に伝わっていくわけではない」という要素をうっすらと投影しています。
…ただ、そこはテーマを表現する上でそんなに大々的にしなくてもいいかなと思ったので、アイテム自体を小さくして“裏テーマ”レベルに抑えました。
【今回の制作の背景】
ここでは、今回の制作に至るまでにあったことと、そこから作品に繋げていくまでに考えていたことなどを書いてみます。
めちゃくちゃ長い余談というか、一番読まなくてもいい部分です。
今回の作品に関係してはいますが、基本的には私自身についてのアレコレなので、「そういうのいいです…」という方は最後の項目の展示概要までかっ飛ばしてください。
今回の作品の準備期間は大体11月頃だったのですが、個人的に大きな出来事が2つありました。
それは、自身の身体の不調と、尊敬しているアーティストの訃報です。
11月の初め頃から全身疲労がひどくなり、その後しばらくしてからさらに強烈な首の痛みと頭痛が出てきました。
起きて動いているときも痛いし、寝るときはさらに地獄のような激痛でまともに寝られず。むしろ寝るのか怖いと思えてくるレベルで。
現在はある程度何とかなっている(医師の反応がとんでもなく雑だったので多分本当に大したことないやつ)のですが、私本人としては本気で「人生終わった」「これ死ぬんじゃないか」と思うほどの絶望を味わっていた日々。
月初から2〜3週間ほど安静にしていた中で、「描けなくなる日が来たら」ということを真面目に考えていました。
今のような展示活動をいつまでやっていられるかはわからないけれど、何かしらの絵を描くこと自体は死ぬまでやってそうだな、とぼんやり思っていた私としては初めてのことです。
そんな状態で過ごしていたときに、とあるアーティストの訃報が流れてきました。
私が年齢1桁の頃から知っていて、10代の頃からちゃんと聴き始め、20年以上追っていたアーティスト。
病名が公表されていたので心の準備はしていたつもりではあったけれど、あまりにも早すぎて目の前が真っ暗になりました。
何となくずっと、根拠なく、もっと長く活動を見られると思い込んでいた。
人が生きる時間は有限であり、創り残せるものには限りがある。そんな当たり前のことが思い出されました。
しかし、その方の音楽自体が無くなったわけではなく。
思い返してみると、私の制作の中にもその音楽から受け取ったいろんなものが影響として残っている。
実際、過去に発表したものの中に、「◯◯が発想源です」という感じで明言しているものもあります(昨年のタツコン参加作品など)。
その音楽で初めて知った表現、その音楽とともに刻まれた思い出…それがなければ今の私にはきっとならなかった。
今回のテーマ「魂(soul)」について、私は「(特定の人を想像した上で語る)その人らしい本質的な部分」という解釈に至ったわけですが、これだと私の本質的な部分…魂には、私自身ではない他の特定の人の魂が大きく影響していることになります。
もちろん、そのアーティストだけではありません。
生きている中で出会ったり知ることになったりした様々な人たち、それらの魂もまた今の私には大なり小なり影響を及ぼしてきました。
自分がこういう考え方になったのは何故か、などのきっかけで大元を辿ると特定の顔が浮かぶことが多いのです(先述のように記憶が曖昧な人なのでちょっと自信ない記憶もありますが…)。
そして私の魂も、もしかしたら誰かにとってそうなっている可能性もあるのかと思うと、「テキトーに生きてられないな」、と何となく謎に変な自意識が湧いて出てきました。誰だお前は。偉そうに。
私は今、自分の思いを絵というカタチで表現する活動をしています。たまに文章も書いてます。
この活動は永遠にできるものではなく、私自身の持つ時間が尽きたら終わり。それ以外の原因で早まる可能性もある。今回、ちょっと危なかったし。
そうなる前に、できる限り、納得がいくものを創り続けたい。
これまでに受け取った誰かの魂と、ついでに私の魂も乗せて。
人が生きていく歴史の中で、ずっと繰り返されていくであろう永遠に繋がる魂の連鎖に、まだ何者でもない私でも爪痕を残せるかな…
とか何とか、何だか大きなようでそうでもないような、わざとらしくなるからむしろ考えない方がいいんじゃないかっていうようなことをちょいと考えてしまった、とある冬の日でございました。
で、今回の制作は、この辺の考え方をメインに据えようと思ったわけです。
そういえば、昔から絵画の解説では、他の作家・作品など具体名を挙げて引用元を示しているのをよく見かけます。
私も今後はもっと作品解説内で言っていこうかな、と。言われないと、いや素人目には言われてもわからん次元の「引用」ありますよね美術解説で。あんな感じで。私のも多分言わないと誰も気づかんから。
【展示の概要】
途中飛ばしたとしても結局どの項目も長くなってしまいました。
気が遠くなるほどの長文にお付き合いいただきありがとうございました。
こちらの作品は、GALLERY龍屋20周年記念企画展「タツコン超」の出展作品です。
GALLERY龍屋(愛知県尾張旭市)にて現在開催中。12月23日(土)まで。
「タツコン超」は、お客様の投票と作品購入で順位が決まる、アートコンペ形式の展示会です。
私はNO.55で参加中。
通販と遠隔投票のページも公開されているので、ご来場が難しい方もWEBから参加できます。
https://www.t2y.info/artist01/19954.html(12月22日(金)18時まで)
1人4票なので、ご参加いただける方は必ず4人選んでください。
本音を言うと自分に投票してほしいと思っているのはそれはそうなのですが、他の作家さん(総勢200人!)の作品も力作揃いで見応え抜群です。
流石テーマが「魂(soul)」なだけあって、熱い魂が込められた作品ばかり。
SNS等で検索すると、他の作家さんの作品解説もたくさん見つかると思います。
興味のある方や、投票先に迷って参考にしたいという方は、探して読んでみると作家さんのいろんな思いが伝わってきてまた面白くなると思いますよ。
最後に、展示概要を載せて終わりにします。
それでは今回はこの辺で。ありがとうございました。
GALLERY龍屋20周年記念企画展「タツコン超」
会場:GALLERY龍屋(愛知県尾張旭市)
日時:2023年12月9日(土)~12月23日(土)
AM11:00~PM6:00 会期中無休